追悼・村上龍さん。小説は、ときどき経営書より効く

作家の村上龍さんが亡くなりました(10月23日に発表・74歳でした)。謹んでご冥福をお祈りいたします。

黒板には、僕が好きだった作品を並べました。「希望の国のエクソダス」「コインロッカー・ベイビーズ」「五分後の世界」「共生虫」「愛と幻想のファシズム」——書き出しながら、もう一度、色々と読みたい、という気持ちでいっぱいになりました。今日は静かに、本の話をさせてください。

25年前の小説が、未来の予行演習だった

経営者の皆さんにもし1冊すすめるなら、「希望の国のエクソダス」です。2000年に出た小説で、学校に行かなくなった中学生たちがインターネットでビジネスを起こし、自分たちの経済圏まで作ってしまう物語。四半世紀前に、ネットが個人に力を与える世界をここまで具体的に描いていたのかと、いま読み返すと背筋が伸びます。この国に足りないものは何か、を中学生に語らせる場面はあまりに有名です。

ビジネス書は「答え」をくれますが、村上龍さんの小説は「問い」をくれました。もしうちの町の中学生が起業したら? もし常識が5分だけズレた世界だったら?——この「もし」を本気で想像する時間は、経営判断の予行演習になる。僕はそう思って読んできました。

そして経営者にとっての村上龍さんは、「カンブリア宮殿」の人でもありました。約20年にわたって、毎週、経営者の話に真剣に耳を傾け続けた作家。小説家でありながら、誰よりも長く「商売の現場の声」を聞いてきた人だったのだと、あらためて思います。

一番の追悼は、読み返すこと

本の中身は変わらないのに、読む自分が変われば、刺さる場所が変わります。会社員の頃に読んだページと、経営者になって読み返すページでは、同じ一行がまったく別の意味を持つ。再読は、自分の変化の計測器です。そして、作家への一番の追悼は、作品を読み返すことだと思っています。

たくさんの問いを、ありがとうございました。

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